全国の日本酒生産量の約三割を出荷するという兵庫県灘五郷
日本三大酒処の一つに数えられます
今回の旅はまずその灘五郷酒蔵を巡ろうというもの
まず向かったのが、その灘五郷の一つ「西宮郷」
阪神西宮駅ではまず観光案内所に立ち寄りましたが、案内所には酒蔵にかかわるグッズやパンフレットがずらりと並んでいました
まずはここで「パ酒ポート 灘五郷2022」を購入
御酒印を頂きながら酒蔵などを巡る旅のスタートです
灘五郷で最初に訪れたのは清酒「白鹿」を醸す辰馬本家酒造が運営する
白鹿記念酒造博物館(酒ミュージアム)」の酒蔵館
生活文化遺産である酒造りの歴史を後世に正しく伝える」ことを目的に、昭和57(1982)年に清酒「白鹿」の醸造元である辰馬本家酒造株式会社によって設立されたんだそうです
瓦屋根が見事なこの木造蔵の創建年代は不明ですが、過去2度の火災を経て明治2(1869)年に復旧された辰馬本家酒造本蔵を平成10年に「明治の酒蔵が帰ってきた」をコンセプトに復興されたのが、この「酒蔵館」なんだそうです
蔵の入り口には酒林と黒松白鹿の薦樽
手前に昔使われていた井戸が見て取れます
中に入ってみると、明治時代に使われてきた酒造りに欠かせない道具が
日本酒の製造工程に合わせ展示されていました
まずは木桶や櫂などの
伝統的な酒造道具が並んでいます
そして日本酒造りには欠かせない「水」と「米」
水は宮水と呼ばれる「西宮の水」
この宮水、六甲山地からの伏流水で酒の味や香りを悪くしたり色を付ける鉄分が非常に少なく、発酵に必要なリン、カリウムを豊富に含んだ硬水で良い酒を造る条件を全て兼ね備えた理想の水です
米は灘が摂播米(摂津・播州)の産地に隣接しており昔から良い米を大量に入荷することが出来ました
特に酒米の優良銘柄であり「酒米の王」ともいわれる「山田錦」は兵庫県六甲山地の北側が主産地であることから
米もまた灘の酒造りに欠かせない要素だと、そんな展示物がありました
山田錦の穂が展示されていますが、通常食用に使用される穂よりもはるかに穂長が高いのが見て取れます
おかげで風で倒れやすいうえ育つのに時間がかかり、病気や害虫に弱いので一般的な食用米に比べて作りにくい品種なんだそうです
【洗米・浸漬】
手前に斗桝が並んでいますが、その斗桝で量った白米を踏桶に入れ、水を入れて足で踏んで洗っている様子が写真で解説されています
洗米後の白米は奥にある漬桶に入れて水に浸したのだそうです
【蒸し】
手前が蒸しに使われる鉄大釜
そして奥にあるのが、甑と呼ばれる道具で鉄大釜の上に設置し、浸漬後の米を入れて蒸すのに使われます
酒蔵館内には昭和30年代まで使用していた釜場の遺構がそのままの状態で展示されていました
【放冷】
蒸しあがった米を筵の上に広げて冷しますが
灘特有の六甲颪と呼ばれる冷たくて乾いた風を利用して冷ますのだそうで
一日のうちで一番寒い時間となる早朝にこの「放冷」の作業を行うため
蒸しは真夜中に行われるのだそうです
【麹つくり】
日本酒は、「一麹、二酛、三造り」といわれますが
この麹室では酒造りで重要な課程である一麹と言われる「麹づくり」が行われます
麹の胞子である種麹(もやし)を冷ました蒸米にうえつけ二日かけて麹を造ります
麹はカビの一種で、米のでんぷん質を糖に変える重要な役割を果たします
【酒母(酛)つくり】
二酛と呼ばれる工程は
宮水、麹、蒸米を混ぜ酒母を作る作業
アルコールを生み出す酵母を育てる酒母は、文字通り「酒の母」です
【生酛(きもと)造り】
半切桶と呼ばれる小さめの桶に米麹、蒸米、水を入れ水分を含んで柔らかくなったところで米を良くすりつぶしします
2~3人がひと組で米と麹を混ぜ合わせ、棒櫂ですり潰す「山卸(やまおろし)」は、大変な重労働で、この作業をしなくなったことから「山廃」なんて呼ばれる日本酒が有り、逆に現在ではその山廃が主流だったりもします
けれど自然の力を活用した、昔ながらの日本酒「生酛造り」
この展示物の背後からは、山卸のさいにタイミングを合わせるため謳われる酒造り唄が流れていました
私もこの工程にこだわる杜氏を、このあと伺う奈良の酒蔵で見て感じてきましたが
今回の旅で「生酛造り」に大変興味が出てきたことから、今後と生酛造りと書かれた日本酒が有れば、まずそちらを飲んでみたいと感じてきました
【醪(もろみ)造り】
三造りは出来た酒母の中に宮水、蒸米、麹を3回に分けて仕込「三段仕込み」を紹介するコーナー
一日目の仕込みは「初添」、二日目は仕込み休み「踊り」、三日目は「仲添」、そして四日目が「留添」と続きます。「留添」の後、17~20日でもろみつくりが終わります
酒税の申告に使われたのでしょう
桶にはサイズが記載されていました
樽づくり道具一式も展示されていました
酒造りで絶対に欠かせられない樽や桶は専門の職人が製作していたそうで
展示されている工具は樽や桶作りの際に使用されたもの
これは西宮の重要文化財でもあるようです
とある酒蔵で聞いた話によると風呂桶が木桶からプラスチック製品に替わったころから
この木桶職人が極端に減少しいまではその伝統的な職人技の伝承もなされなくなり
大きな木桶は簡単には作れなくなってるのだそうです
【圧搾】
酒袋の中に醪(もろみ)を入れ、槽(ふね)の中に酒袋を並べて上から圧力をかけて搾り、酒と酒粕に分ける工程
現在では「YABUTA」などの機械式圧搾機で絞るのが通常ですが
槽(ふね)でなければ出せない味があるとこだわる杜氏もこうして酒蔵を歩いているとたまに見かけます
圧搾作業の上に
「あみだ車」を見ることが出来ました
これは酒造道具を上げ降ろすための道具として使われたようです
震災の記録なるコーナーもありました
灘五郷周辺は、阪神淡路大震災でかなりの被害を受けたエリア
震災で、灘の酒蔵は甚大な被害を受けました
平成7(1995)年の阪神・淡路大震災では白鹿も大きな被害を受けたのだそうです
そのころあったレンガ造りの博物館は全壊したそうですが、写真がそれを物語っていました
震災の影響で、壊れた酒造道具なども展示
倒壊した酒の桶が物悲しいですね
酒蔵館の見学の後、蔵元直営のショップ&レストラン「白鹿クラシックス」にも立ち寄ります
目的は「パ酒ポート」に御酒印をいただくこと
このあとまだ十数蔵回らねばなりませんのでお土産の日本酒はここでは我慢
ということで次は日本盛 酒蔵通り煉瓦館へ