十勝平野が一望できる小高い丘に建つ建物
正式名称は「池田町ブドウ・ブドウ酒研究所」なんですが、中世のヨーロッパのお城を思わせるところから「ワイン城」と呼ばれています
これが人口約7,000人の小さな町、池田町が運営している町営のワイン工房というから驚きですね
さて時は1952年、十勝沖地震で多大な被害を受けた池田町
それに加え翌年から2年連続冷害に見舞われ町は凶作
そんな町の財政危機を救うため、当時の丸谷金保町長の発案で「ブドウ栽培」と「ワイン製造」がスタートすることとなりました
ブドウ栽培に適した土地ではない池田町で苦難を乗り越え誕生した十勝ワイン
その後、国内外から高い評価を得る、北海道・十勝産ワインのブランド化に成功
訪れたワイン城ショッピングエリアにはワインがびっしりと陳列されていました
そしてこの成功がその後、富良野市が経営する自治体ワイナリー「ふらのワイン」や
七飯町で1973年に設立されたはこだてワインにも影響を与えたようです
2022年現在北海道には53ヶ所のワイナリーがありますが
今後もそんなワイナリーも増加の傾向です
それもこれもやはりここ十勝ワイナリーの成功が、きっかけになったのでしょうね
さてこの日は有料(@2,000)の「いけだワイン城 体験ガイドツアー」なるものに参加
豊富な知識を持つスタッフからためになるお話を色々聞かせて頂きました
ツアーはまず
ワイン製造棟(C倉庫)にあるスパークリングワイン製造施設から
十勝ワインでは瓶詰めされたワインに、糖分と酵母を加えて瓶の中で再び発酵させて炭酸ガスを生じさせる、いわゆる「シャンパーニュ方式」の伝統的なシャンパンが造られていました
その証にルミュアージュ(動瓶)に使われていたピュピートルと呼ばれる木製の台がここには展示されています
動瓶されたあと、瓶のネックに溜まったオリの部分を凍らせて抜栓しオリが除去する「オリ抜き」の機器もここにはありました
さてここC倉庫では醸造用のタンクを拝見したほか
十勝ワインに使われるブドウのお話が有りました
当初は町内に自生する山ブドウに着目して翌年からブドウの栽培を試みますが
そんな山ブドウが、ロシアのアムール川流域に自生し、ワイン醸造用に適している「アムレンシス亜系」であることが明らかになり、そんな山ブドウで造った「十勝アイヌ葡萄酒」がいきなり1964年の国際ワインコンペティションでみごと銅賞を獲得してしまいます
そんな山ぶどうを交配させ、ワイン城があるこの丘の名を付けた赤ワイン品種「清見(きよみ)」が誕生
ただこの品種は冬に土をかぶせ寝かせる培土と春にそれを元に戻す排土の必要があり、労力軽減のためその後、「清舞(きよまい)」と「山幸(やまさち)」の交配に成功させているのだとか
十勝産ミズナラで作った大樽
いまやこんな大きな木樽を造る職人がいなくなりつつあるので貴重なものですね
いけだワイン城の周りのぶどう畑では盛んに作業が行われていました
これは「清舞」それとも「山幸」でしょうか
次にツアーは「ワイン城地下熟成室」へ
地下2階の空間で約1年間、ワインは木樽で熟成されるのですが
その間に約1割ほどが減るのだそうです
いわゆる「天使のわけまえ」
減った分はしょっちゅう継ぎ足しているので、口の周りが赤く滲んでいました
2020年の改装時、新たに8,000ℓの大樽を割いた屋根をしつらえた「バースペース」が造られたそうですが
独創性のある重厚な空間ですがまだ一度も使用されていないんだとか、なんだかもったいないですよね
特に奥の壁が黒いカビで覆われているのなんか、いかにも古いワイン醸造所って感じで趣があるのですが
こちらは「ビン熟成」
オールドビンテージとなる年代物のワイン(1991年なんてのもありました)に埃がたんまり溜まっていますが
このワインは、販売することは目的とせず、試験研究のためだけに保存されているのだとか
なんだかもったいない話です
その後ツアーは1階奥の「ブランデー蒸留室」
蒸留室に入室しブランデーを造るための蒸留器と実際にブランデーを熟成している樽を見せていただきました
とくにこのポットスチルという蒸留器
ここではワインを蒸留して造られる、いわゆるコニャック方式によるブランデー造りを
なんと1964年からやっているのだとか
ここでスタッフから聞いた話ですが
平成の米騒動と呼ばれる事態に陥った1993年、「清見」などのブドウの収量が例年の4分の1程度にまで落ち込んだうえ、糖度が低く、酸度が高いためワインの製造はあきらめたそうです
ところがそんな清見をブランデーとして仕込んだところ、
繊細で洗練された他にはないブランデーとなり、大冷害がもたらした僥倖といえる、洋酒ファン垂涎の逸品に仕上がったそうです
なんだかそんあ話を聞くと無性にその十勝ブランデー1993飲んでみたくなりました
これはツヤーではありませんが、廊ミュージアムには
アランビックという銅製の蒸留器が展示されていました
ワインを蒸留してコニャックを作る為の蒸留器ですが、100年以上も前のもので、全て銅製
1950年代まで実際に使われていたそうです
最後はワインテイスティング(30分間)
専門スタッフの説明を聞きながら以下の酒類の試飲を行います。
本格シャンパン方式で造られた『スパークリングワイン』
樽熟成を行った赤ワイン『山幸』
一切の加水を行っていない『ブランデー原酒』
ちなみにこの日のスパークリングワインは
「ブルーム 白 ※限定醸造」
先ほど見た瓶内二次発酵法でつくられたスパークリングワインでした
ブランデー原酒 1991年
ラベルに樽番号が記載されています
30年以上も樽で長期熟成されたブランデー
こいつがものすごく美味しかったのだとか
ただ試飲はいつもの通り車で来ているので呑めません
JR池田駅は近くにあるので、次回は汽車で伺うことにします
ということでいけだワイン城 体験ガイドツアー堪能させていただきました
今回は丁寧な解説ありがとうございました
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