「るみ子の酒」伊賀_森喜酒造場酒蔵見学

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伊勢を訪れたさいに立ち寄った伊勢百貨店五豊美
まぁ三重・伊勢の銘品、逸品がならぶお土産屋さんなのですが
ここには三重・伊勢の銘酒の数々と利き酒が体験できるコーナーがあり、利き酒を楽しんできました
その際に目を引いたのが、お店の冷蔵庫の上にディスプレーされている「るみ子の酒」の菰樽
日本酒ブームの火付け役となった漫画『夏子の酒』の作者・尾瀬あきらさんによるイラストが描かれた樽酒でした
 

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その「るみ子の酒」
三重県伊賀の酒蔵 森喜酒造場の日本酒で、ボトルの「裏ラベル」にはこう記されていました
『るみ子の酒のラベルデザインと命名は漫画「夏子の酒」の作者、尾瀬あきら先生のご厚意によるものです』・・・・とありました

ちなみに何故・・・・
森喜るみ子さんは長女で薬剤師の道を進んでいましたが、蔵の経営をしていた父親が病で倒れ急遽、1989年に蔵を継ぎます。
慣れない造りや廃業の危機の中、尾瀬あきら著の「夏子の酒」を読み境遇が似ていたことから、尾瀬氏に手紙を書いたことがきっかけとなり純米蔵にすることを決意(1998年BY(醸造年度)から全量純米)、尾瀬氏から「るみ子の酒」を命名され、るみ子さんの姿をラベルにしてもらったそうです。
 

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伊勢百貨店五豊美で利き酒をした、そんな森喜酒造のるみ子の酒が忘れられず
奈良からレンタカーを駆り、1時間半
遠く三重県の伊賀まで来てしまいました
たどり着いた森喜酒造「森喜酒造場」
明治26年(1893年)創業ですが
全国的にみても非常に小さな酒蔵で、製造量は年間300石(54000リットル)ほどなんだそうです
けれど米と麹、水だけで醸す手造りの「純米酒」のみを造っている本格的酒蔵です
 

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ショップ・事務所棟だろう玄関には杉玉どころか看板もありません
おそるおそる玄関を開けても、誰もおりませんでした
本当にここで良かったのかな?
と思ったところ、出てこられたのがおそらくは蔵元だったかと思います
 

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あらかじめ予約しておいたのですが、そんな蔵元みずから丁寧に酒蔵を案内していただきました
まずは洗米
忍者の里としても知られる伊賀市は、高品質な三重県産『山田錦』の大半が作られている米どころとして有名で
その米どころで栽培された酒米を洗米するのが、このウッドソンの限定吸水洗米用 (バッチ式)
はじめて見たのですが、これ結構小さい
小規模な酒蔵である森喜酒造場ならではの道具のようにも思えますが、実はこれが優れモノなんだとか
 

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続いて「蒸し」の工程
米の張り方には一度に甑内に張り込む方法と、甑に蒸気が上がってきたら米を薄く均一にまき、蒸気が米の層を抜けたら次の米をまく作業を繰り返す「抜掛け法」と呼ばれる方法の2つが有り
森喜酒造場では後者の抜掛け法で蒸されます
蒸米もまた酒造りには非常に重要な工程で
お米を蒸すことで、熱によって殺菌効果を施し、硬い米をやわらかくして麹菌が繁殖しやすい状態にすること

夏子の酒に出てくる登場人物のモデルになったといわれる「上原先生(酒造技術指導の第一人者)」もまた
『蒸気に顔を吹かれ、かつ忙しい作業ではあるが、酒質向上のためには、この"戦前の常識"の重要性が見直されるべきである』と書き記されているのだとか

 

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酒造りに使われる桶はプラスチック製
「ささら」も見ることが出来ました
それにスコップ、いまや酒造りには欠かせないアイテムかと思います
 

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甑に比べてバーナーはなんだか多少、貧弱に思えました
 

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熱源に昔は薪などが使われたのでしょうか
蔵の煙突はそのときの名残のように思えます
ただバーナーに替わっても、写真の煙突はいまだ現役なんだそうです
 

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蒸された米は放冷機を通し、熱を放散させ乾燥させます
蔵には年代物の放冷機が有りました
 

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荒熱をとって適温になったところで2階の製麹室に運ばれます
製麹室はパネル組立式のもの
どちらかというと少し古びた感のある酒蔵ですが、この製麹室にいたっては清潔感がひしひしと伝わりました
高温多湿な環境を制御するのでしょうか、これまた年代物の自動製麹装置制御盤(ハクヨー)が設置されていました
 

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森喜酒造場ではすべての麹を伝統的な製法である「蓋麹法」と呼ばれる方法で造っているそうです
これは『麹蓋』と呼ばれる専用の小箱にお米を小分けにして盛り、約4時間ごとに積み替え(麹蓋の場所を移動させること)を行うそう
 

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ということで、そんな麹蓋を積み替える部屋が隣に有りました
 

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そういや先日伺ったオープンしたばかりの灘五郷酒処で頼んだ「灘五郷酒処セット」
そのセットを載せるのに使っていたお盆ってこの『麹蓋』の使い古しだったんですね
 

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太い梁が特徴的な明治中期創業の酒蔵
神棚にはもちろん松尾さまの札が祀られていました
 

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今回説明を受けた中で感銘を受けたのが
生酛は古来の製造方法で、伝統的な「山卸し(酛摺り)」という作業
山卸しは10℃以下の気温の低い夜中~早朝にかけて行われ、かつ、摺りつぶす操作を約2時間ごとに繰り返し行うため、非常に大変なんだとか
そんな山卸に使われる道具(櫂や桶)もここにはありました
けれど山卸し(酛摺り)は他では出せない蔵独自の味、自然発酵ならではの複雑さ、力強く奥行きのある味わいが出るんだとか
灘五郷もそうでしたがこの山卸しにこだわる酒蔵がこの一帯には多いようで
私自身は山廃で充分、今どき山卸しなんてとも思いましたが、今回の旅で改めてその山卸しを見直すことに
「山卸し」や「生酛づくり」なんてラベルの日本酒が有ったら思わず手に取るようになりました


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ずらりと並ぶホーローの仕込みタンク
なかにはビニールホースが巻かれたタンクも有りました
どうやらタンクを冷やすのに使われたようです
 

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冷すだけではなく、温めるのはこのステンレス製の容器である「暖器」
中に熱湯を入れ、酒母の温度を上げる操作を行う
いわゆる暖気(だき)といわれる操作をこいつで行うようです
 

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醪を絞る、上槽に使われるのは昔ながらの「漕(ふね)」
鋳物の圧搾機で上から圧力をかける「佐瀬式槽搾り」と思いきや
残念ながら部品の調達が出来ず使われていないのだとか
 

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上槽に使われているのは昭和製作所の自動圧搾機
いつもみる薮田産業のそれではありませんでした
 

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そして瓶詰
ラインにある瓶詰機もなんだか年代物でした
 

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最後のラベル貼りは、なんと手貼り
そういや「夏子の酒」でも福井で美泉を醸す内海酒造でラベルを手貼りしているシーンがあったのを思い出しました
 

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瓶洗い機も年代もの
 

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そんな設備ばかりでしたが、とりわけ設備に力を入れていたのが
蔵を出たところにあったコンテナの冷蔵庫
 

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中には瓶詰めされた日本酒がずらり
森喜酒造場はどうやら日本酒の保存に一過言ある酒蔵のようです
 

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酒蔵見学のあとはお楽しみの試飲
  

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店のショップの冷蔵ガラスケースには、「るみ子の酒」がずらりと並んでいました
この森喜酒造場さんは、日本酒の保管にはこだわりが有るのでしょうね
 

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試飲したのは(もちろん私はドライバーなので見てるだけですが)
1992年「夏子の酒」の作者・尾瀬あきら先生により命名された『るみ子の酒』シリーズ
ラベルも尾瀬先生の描き下ろし
「純米酒 るみ子の酒 無濾過生」
「すっぴん特別純米・無濾過生原酒・6号酵母」
「すっぴん特別純米・無濾過生原酒・9号酵母」
「無農薬山田錦90% きもと無濾過生原酒」
「特別純米・無濾過生原酒・6号酵母」
「RUMIKO NO SAKE JYUNMAI DAIGINJO(山田錦40)」
それと特別に「にごり酒」も試飲することに
いや~こういう所に車で来るところではないですね
 

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ショップ・事務所棟には「夏子の酒」も置かれていました
 

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あと一つこんなところに「國酒」プロジェクトの色紙
書いたのは宮澤喜一元内閣総理大臣
お~と思いましたが、じつはこれって買うのだとか
ちなみに色紙一枚はいったい幾らとは聞きませんでした
 

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さて日本酒のラベルのモデルとなったのが、森喜酒造場の蔵元である森喜るみ子さんですが、夏子の酒を通り越して今や田んぼではトラクターに乗り田んぼを耕していました
そう森喜酒造場では平成7年より自社田で酒米作りを始め、山田錦を育てているのだとか
 

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最後にるみ子の酒
「すっぴん特別純米・無濾過生原酒・9号酵母」
と、前述の「純米酒 生酛」を購入
帰宅後、愉しむことにします
 

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と言う事で、森喜酒造場さん今回の酒蔵見学ありがとうございました

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この記事について

このページは、r-ohtaniが2022年6月24日 05:53に書いた記事です。

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